結論:小さな箱に立てて詰め、レコードは最初に降ろす

レコードはタンスの荷物ではなく、本と同じように梱包します。つまり、ジャケットの背を揃えて立て、膝が崩れることなく一人で持ち上げられる大きさの箱に入れることです。最大の失敗は、箱に何枚入るかだけで選び、満杯にしたときの重量を考えないこと。容量だけならLPが150枚入る箱でも、重さは40kg近くになる場合があります。そんな箱を階段で2フロア運べば、角をぶつけたりジャケットを割ったりせずに済むほうが難しいでしょう。

もう一つの原則は箱ではなく車両についてです。レコードは最後に積み、最初に降ろすのが基本。夏場や厳しい寒さのなかでの引っ越しなら、できれば荷室に入れないのが理想です。暑い車内に数時間置くほうが、輸送中の揺れそのものより大きなダメージになります。箱の重量と車内に置く時間、この2点を押さえれば、残りは調整の問題です。以下では、引っ越し業者の案内ではほとんど計算されない具体的な数字まで詳しく見ていきます。

箱に入るレコードの枚数と、持ち上げられる重さの境目

インナースリーブとジャケットを含むLPは、厚さが約3mmあります。そのため、レコード100枚で棚や箱の奥行きを約30cm使う計算になり、手持ちの箱に何枚入るかを考える目安になります。内寸の奥行きが約25cmある小型のレコード収納箱なら、スペースだけで約80-85枚。奥行き45cmに近い一般的な大きめの引っ越し用段ボールなら、150枚以上が物理的には入ります。

  • 小型箱(内寸約25cm):スペース上は約80-85枚
  • 中型箱(奥行き約35cm):スペース上は約110-115枚
  • 大型の引っ越し用箱(奥行き約45cm):スペース上は約150枚
  • 特大段ボール(奥行き約60cm以上):スペース上は約200枚

問題は、「入るか」と「持ち上げられるか」は別の話だということです。検索上位の梱包ガイドは、ほとんどが前者しか説明していません。実際に箱を決めるのは次の重量計算で、上の容量計算よりかなり厳しい数字になります。

重量計算(ここを省く人がほとんどです)

手元の盤を量った経験では、12インチLP本体は通常90-180gほどです。オーディオファイル向けの「180g」再発盤はより重くなりますが、これは盤の厚さを示す表記であって、音質を保証するものではありません。これにカード・ジャケット約40-70g、数gのポリ内袋を加えると、スリーブとジャケット込みで1枚あたり約220-300gになります。箱の計算では、1枚250gを目安にすると実用的です。自分で確かめるなら、キッチンスケールで10枚量って割ってみてください。

1枚250gなら、レコード100枚で約25kg(約55 lb)。これは一人で無理なく運べる重さを超え、多くの引っ越し業者が一人用の箱に設定する重量制限(通常は20-23kg / 44-50 lb前後)も上回ります。先ほどの箱の大きさに当てはめると、次のようになります。

箱のサイズ(内寸の奥行き)スペース上入る枚数満杯にした場合の重量推奨枚数
小型(約25cm)約85枚約21kg / 46 lb約80枚
中型(約35cm)約115枚約29kg / 64 lb約80枚、残りは緩衝材
大型の引っ越し用箱(約45cm)約150枚約37.5kg / 83 lb約80枚、箱の大半を緩衝材にする
特大段ボール(約60cm以上)約200枚約50kg / 110 lbレコードには使わない

どんな箱でも、1箱あたり約80枚を上限にし、余ったスペースは緩衝材で埋めるのが正解です。箱の容量いっぱいまで詰めるのではなく、この一点を変えるだけで、引っ越しを乗り切れる箱になるか、階段の途中で底が抜ける箱になるかが決まります。

梱包の基本:立てる、隙間を埋める、上に載せるものを選ぶ

レコードは棚に並べるときと同じく、必ず立てて運びます。平積みは避けてください。数時間にわたりLPの重さが下の盤へかかると、一番下のレコードが反ってしまうことがあります。走行中に傾いたり滑ったりしない程度に詰めつつ、ジャケットの背が裂けるほどきつくしてはいけません。両端に手を差し込める程度の隙間を残し、梱包紙や段ボールを切ったものをスペーサーとして入れるのが現実的です。

古くなった紙製インナースリーブは繊維が落ち、引っ越し中の揺れでレコード表面を擦ることがあります。まだ交換していないなら、この機会に帯電防止タイプのポリ内袋へ替えるとよいでしょう。スリーブ選びはレコードの保管方法のガイドも参考にしてください。レコード箱の上に載せるものは、畳んだ毛布や文庫本の箱など軽いものに限定します。別のレコード箱や、下のジャケットを長時間押さえつける重い荷物は載せないでください。

夏と冬、車内がレコードに与えるダメージ

現在のLPは、カーボンブラックや安定剤を含むPVC(ポリ塩化ビニル)製です。PVCは実際に溶ける温度よりはるかに低い温度で軟化します。夏の引っ越しでトラックの荷室が直射日光にさらされると、車内や屋根裏に近い高温になることがあります。触れないほど熱くならなくても、その状態が続けばレコードは恒久的に反る可能性があります。これは乱暴な扱いとは無関係に起きる、レコードの引っ越しで最大のリスクです。分子レベルでの仕組みはレコードの熱・日光によるダメージで詳しく説明しています。

夏に引っ越すなら、貴重盤や希少盤は引っ越しトラックではなく、自分の車の客室へ手運びするのが安全です。新居でも、レコード箱は最後ではなく最初に降ろします。寒さにも別のリスクがあります。低温ではレコードがもろくなり、落としたりしならせたりした際に割れやすくなります。さらに、化学的に異なる素材である1950年代以前のシェラック製78回転盤は、暑さにも寒さにも現代のPVC盤よりかなり弱いので注意してください。

保険で補償されるもの、されないもの

一般的な引っ越し保険では、レコードコレクションは通常の家財として扱われます。事前に高額品を申告し、明細を作っていない限り、1点または1箱あたりの補償額に低い上限が設けられていることが少なくありません。Discogsの販売済み相場で、300枚のコレクションが1枚あたり平均でも$15-25なら、総額は$4,500-7,500です。この金額なら一般的な1点あたりの上限をすぐに超えます。Popsikeの過去のオークションデータで$100-300以上の落札例が見つかる希少盤が何枚かあれば、さらに差は広がります。

必要なのは、事故のあとに保険請求することではなく、引っ越し前の記録作りです。棚に並んだ状態を撮影し、箱ごとに何が入っているかを表計算ソフトやアプリで記録し、高額盤はおおまかな査定額を出しておきましょう。レコードコレクションの保険と記録方法のガイドでは、引っ越し業者の保険証明書に含まれるもの・含まれないもの、そして補償額に対して特約や単独のコレクター保険が一般にいくらかかるかを解説しています。

レコードを開梱し、室温になじませる

トラックが極端な暑さや寒さにさらされた直後に、すぐ開梱してはいけません。封をした箱をまず室温で1〜2時間置いてください。冷えた箱を暖かい家の中へ運ぶと、ジャケットやレコード表面に結露が生じることがあります。その状態で開梱すると、水分が消える前に紙スリーブへ押し込まれるおそれがあります。この短い待ち時間は、ほとんどの梱包ガイドが省く工程ですが、最も安価な保険ともいえます。

箱が室温に戻ったら、上から順に開けます。あとで再生するときまで破損に気づかないことがないよう、箱ごとに数枚を抜き、目立つ反りや新しい擦り傷がないか確認してから棚へ戻しましょう。棚にはすぐ立てて戻し、「一時的に」と平積みしたままにしないこと。引っ越しが無事終わったあとに反りが発生する原因は、まさにその一時的な積み重ねです。コレクションを見直すタイミングでもあるなら、手放す盤やダメージを受けた盤について、レコードのグレーディング基準レコードの売り方のガイドも役立ちます。

レコードコレクションの梱包・保険チェックリスト

箱をテープで封をする前に、次の項目を確認してください。輸送中に問題が起きた場合、保険会社から求められる記録にもなります。

  1. 家具を解体する前に、棚と箱を設置した状態で撮影する
  2. レコード10枚を量って1枚あたりの重量を確認し、各箱を約80枚以内にする
  3. どのタイトルを何番の箱に入れたか、表計算ソフトやカタログアプリで記録する
  4. 引っ越し前にDiscogsの販売済み相場やPopsikeで希少盤の価格を確認する。保険請求のあとではなく、事前に行う
  5. オリジナル盤、オリジナル・ボックスセット、代替のきかない盤は、ほかのレコードと一緒に箱詰めせず手で運ぶ
  6. 業者に、1点または1箱あたり標準補償に何が含まれるかを書面で確認する

VinylAIのようなツールを使えば、カタログ作成の手間を大幅に減らせます。バーコードを読み取りながら梱包すれば、箱の中身の記録を手入力するよりずっと短時間で作成できます。必要になったとき、保険会社へ渡せる記録にもなります。引っ越し後に何かがなくなってからではなく、必ず引っ越し前に済ませておきましょう。