結論:水平にするのは台座ではなくプラッター
この記事でひとつだけ覚えるなら、水平器は台座の上端やターンテーブルの外装ではなく、プラッター(またはプラッターに載せたレコード)に置いてください。精度の高いターンテーブルなら、台座、サブプラッター、プラッターはすべて平行に加工されているため、どの面を測っても問題ありません。しかし、安価なダイレクトドライブ機やベルトドライブ機では、樹脂成形パーツ、わずかに uneven な脚の取り付け、ベアリング上でプラッターが完全に水平に座っていないことなどが原因で、台座は水平に見えても、プラッター自体が実際には少し傾いている場合があります。
この違いをほとんどのセットアップ解説が省いているため、脚を調整して「水平にした」のに音飛びが直らず、レコードやカートリッジのせいだと思い込む人が出てきます。重要なのはプラッターです。レコードと針が実際に接する面は、そこしかないからです。新しいターンテーブルを箱から出したばかりなら、ほかの作業をする前にここを確認しましょう。見た目が水平だから大丈夫だと思い込むのは、新しいオーナーがやりがちなターンテーブルの初期セットアップの失敗のひとつです。
なぜ水平が溝の再生に関係するのか
レコードの溝は左右に壁が切られており、針はその両面をなぞります。カウンターウェイトやアンチスケーティング、針圧の設定を含むトラッキング機構は、重力が針を溝へまっすぐ均等に押し下げることを前提に調整されています。プラッターが傾くと、重力そのものは真下に働き続けますが、溝の面がその力に対して垂直ではなくなります。その結果、針は片側の溝壁にもう一方より強く押し付けられます。これはカートリッジが苦手とする横方向の力です。
実際にはトレースが左右で不均等になり、片チャンネルの歪みが増えたり、針先の接触面が偏って摩耗したりします。影響の大きいレコードでは、音量の大きい部分や変調の深い部分で針が溝から外れ、音飛びや同じ溝のリピートが起きることもあります。プレス時の反りや偏心が重なると、少し傾いたターンテーブルでは、水平なプレーヤーなら問題なく再生できるレコードまで安定しなくなります。同じレコードを再生して、一人は問題ないと言い、もう一人は音飛びすると言うことがあるのも、原因がレコードではなくセッティングの違いだからです。
水平器を置く場所
小型の気泡式水平器かスマートフォンを使い、少なくとも前後方向と左右方向の2通りで確認してください。できれば斜め方向も測りましょう。台座は一方の軸では水平でも、もう一方では傾いていることがあるためです。マットが薄く硬い場合(フェルトや薄いゴム)は、マットの上に直接置きます。マットが厚い、表面に凹凸がある、または柔らかいゴム製で水平器自体が揺れそうな場合は、平らなレコードの上で測ってください。たとえば180g重量盤は、薄くわずかに反った90g盤より安定した平面を作りやすいので、レコードを使うなら手持ちの中で最も反りの少ないものを選びます。
- プラッターを止め、水平器を中央に置いて測る。スピンドル付近や、少し盛り上がったマットで誤差が出やすい外周付近は避ける
- プラッターを90度回してもう一度測る。ベアリング上でプラッターがわずかに軸ずれしている場合があるため
- レコードの上で測る場合は、反っていないと分かっている盤を使う。先に平らな面で反りを確認する
ダストカバー、台座の裏側にある脚の取り付け部、ターンテーブルを置くラックなどを代わりに測るのはやめましょう。どれもプラッターの状態を正確には示しません。
気泡式水平器とスマホアプリ、どちらを使う?
気泡式水平器は機械式の基準器です。ターンテーブルで使う小さなサイズなら、水平器そのものの誤差が問題になることはほとんどありません。むしろ注意すべきなのは、気泡管が均一でない安価な製品が誤った値を示すことです。内蔵加速度センサーを使うスマホアプリも、無料で実用的な選択肢です。家庭で聴く分には、スマホアプリによる水平チェックで十分です。2本の線に対する気泡の位置を目視する代わりに角度を数値で表示できるため、判断しやすいという利点もあります。
スマホを使う際の落とし穴は、接地面です。厚いケース、丸みを帯びた背面、カメラの出っ張りがあるため、プラッターマットの上で本体が揺れ、測定前から誤った値になることがあります。硬く均一な面、たとえば平らなレコードのラベル部分や薄いマットの上にスマホを寝かせ、向きを変えても同じ値になるか確認してください。どちらを使うにしても、実際に手に取る方を選びましょう。レコード棚に入れておける$10の水平器は、存在を思い出さなければならないアプリより使われます。
どの程度水平なら十分なのか
ここが、ほかの解説がほとんど省いているポイントです。ターンテーブルで完璧な水平を追い求めるのは、たいてい労力に見合いません。目安として、気泡が中央の線の間に無理なく収まっている、またはスマホアプリが概ね0.5度から1度以内を示しているなら、通常のリスニングには十分です。それ以上の機械的な完全水平との差を聴き分けられる可能性は極めて低いでしょう。実際に音へ影響するのは、わずかな誤差ではなく、目で分かる傾きが一貫していることです。気泡が管の端に張り付いている、スマホが数度ずれている、といった状態が問題になります。
数値よりも状況が重要です。反ったレコードでは、水平なターンテーブルが単独で生む上下・左右の動きよりも、針が大きく動かされます。つまり、台座の0.5度の傾きを気にしながら、プレスや保管中に生じた反りを放置するのは、問題の優先順位を間違えています。いったんターンテーブルを水平にし、数週間後も状態を確認してください。特にカーペットの上では脚が沈むことがあります。その後はレコードのコンディションやカートリッジの調整に時間を使う方が、実際の改善につながります。
調整脚がある場合、ない場合
エントリークラスを超える多くのターンテーブルには、個別にねじ込んで高さを変えられる脚が付いています。追加のものを挟まず、脚の調整だけで傾きを直せます。まず片側の2本の脚を基準に前後方向を合わせ、次に左右方向を調整してください。一方を動かすともう一方も少しずれることがあるため、最後に両方向を再確認します。初回のセットアップでも5分ほどでできる作業です。棚の上で水平に見えるからと省略するのは、新しいオーナーがやりがちな最初の失敗のひとつなので、レコードに針を落とす前に済ませましょう。
安価なターンテーブル、多くの一体型プレーヤーやスーツケース型プレーヤー、一部のエントリー向けベルトドライブ機には、調整できない固定式のゴム脚が使われています。下の面が少しでも uneven なら、現実的な対策は薄いスペーサーです。折った厚紙、電気テープを数層重ねたもの、ターンテーブル用のシムキットなどを、低い側の脚の下に入れます。振動でずれる硬く小さなもの、たとえばコインは避けてください。荷重を少し広い面で受けられる素材が適しています。3本の脚でガタつき、1本が常に浮いているなら、製造上の問題か棚の問題です。シムだけで長期的に確実な解決をするのは難しいでしょう。
下に置く面:たわみと足音の影響
ターンテーブルを何の上に置くかは、水平かどうかと同じくらい重要です。たわむ面の上では、水平にしたターンテーブルも使用中に水平を保てません。薄い化粧板の棚、ブラケットで支えたガラス棚、ぐらつくメディアラックの上にターンテーブルを置く場合などは、モーターの振動や歩行による振動で少したわみます。近くを人が歩く、低音の強い曲をかける、サブウーファーが近くにある、といった状況でも同じです。こうしたたわみは、傾いたターンテーブルと同じ横方向の針圧を、常時ではなく断続的に発生させます。
しっかりした専用の設置面、たとえばオーディオラック、アンカーだけでなく間柱にボルト固定した壁掛け棚、重量のあるサイドボードなどは、見た目がきれいでも薄い棚より常に有利です。レコード収集を始めたばかりで、最初のターンテーブルと家具を同時に買うなら、デザインよりも安定してたわまないことを優先してください。防振脚や高密度MDF/スレート板をターンテーブルの下に置くとさらに改善できますが、これらは頑丈な土台の上に加える工夫であり、土台の代わりにはなりません。
ターンテーブルが水平でないときの症状
水平でないターンテーブルでは、漠然と「音が悪い」というより、特有の分かりやすい症状が出ます。最も明確なのは、レコードの同じ面で毎回音飛びやリピートが起きる、または音量の大きい曲ほど悪化することです。これに当てはまるなら、専用のレコードの音飛びトラブル解決ガイドで、水平調整以外の主な原因も確認してください。より subtle な兆候として、ステレオの音像が片チャンネル側へ寄る、片方のスピーカーだけ低音が薄く聞こえる、といった症状もあります。これは片面の特定箇所だけでなく、再生中ずっと針が片側の溝壁を強くなぞるためです。
長期的には、水平でないターンテーブルは針先の偏った摩耗を早めます。針先の片側だけにフラットスポットが早くできるほか、数か月にわたって再生したレコードには、目で見て分かる左右非対称の摩耗跡が残ることもあります。中古ターンテーブルの状態を確認するときや、新たに音飛びを調べるときも、水平のチェックは1分もかかりません。プレス不良、カートリッジ、レコードそのものを疑う前に、見落とされがちな原因をひとつ除外できます。